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税務Q&A

■税務Q&A
◎出資額限度法人について(2005年7月29日)
出資額限度法人とはどのような医療法人ですか。出資額限度法人の位置づけ、内容、課税上の取扱いなどについて教えてください。

◆ ◇ ◆ ポイント ◆ ◇ ◆
  1. 出資額限度法人は、出資持分のある社団医療法人の一類型として、出資持分を残したまま、社員の退社時における出資払戻請求権及び医療法人の解散時における残余財産分配請求権に関し、その法人財産に及ぶ範囲を実際の払込出資額を限度とすることを定款上明らかにした医療法人をいいます。
  2. 課税上の取扱いについては、出資額限度法人への移行に伴う課税は、医療法人や出資者、退社した社員のいずれにも原則として生じないこととされています。出資者の退社などに伴って残存出資者の持分が増加することで発生する「みなし贈与」の課税については、同族出資比率50%以下など3つの同族要件及び特別な利益供与の禁止を満たす場合は非課税とされます。
  3. 同族出資比率50%以下のハードルは高く、また、課税上の取扱いについて詳細が定かでない点もありますが、昨年8月制度化後相当数の移行事例があるようです。


1.「出資額限度法人」の位置づけ、内容、社団医療法人からの移行等
平成16年6月「医業経営の非営利性等に関する検討会(報告書)〜「出資額限度法人」の普及・定着に向けて〜」がとりまとめられ、同年8月、厚生労働省から各都道府県に“いわゆる「出資額限度法人」について”の通知がなされ、通知レベルで制度化されました。
「出資額限度法人」の位置づけは、医療法人の太宗を持分の定めのある医療法人が占めている現状に照らし、出資者にとっての投下資本の回収を最低限確保しつつ、医療法人の非営利性を徹底するとともに、社員の退職時等に払い戻される額の上限をあらかじめ明らかにすることにより、医療法人の安定的運営に寄与し、もって医療の永続性・継続性の確保に資するものです。

◎出資額限度法人に関する骨子
  • 出資額限度法人の定義
    社員の退社時における出資持分払戻請求権や解散時における残余財産分配請求権の及ぶ範囲を払込出資額を限度とすることを定款において明らかにする社団医療法人

  • 出資持分の返還請求権の及ぶ範囲
    解散・退社時の出資社員への返還額は、個々の出資社員についてその出資額を超えない。法人の資産価額が出資時より減少しているときは、出資時の価額を上限として、現存する法人の資産から出資割合に応じて返還する

  • 返還される「出資額」
    金銭・現物出資を問わず、出資した時点の価額(出資申込書記載額の等価)を基準とする。追加出資した場合も時点の差異による調整はしない

  • 残余財産の帰属
    払込出資額を超える残余財産は国、地方公共団体、特定・特別医療法人に帰属させる
社団医療法人で出資持分の定めのあるものは、定款を変更して「出資額限度法人」に移行でき、また、「出資額限度法人」は、定款を変更して社団医療法人で出資持分の定めのないものに移行できます。
なお、厚生労働省では、「出資額限度法人」の普及・定着に向けてモデル定款を策定して、周知・活用をすすめています。
社団医療法人と出資額限度法人のモデル定款の比較(異なる箇所抜粋)
  社団医療法人のモデル定款 出資額限度法人のモデル定款
第3章 第9条 社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。 社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払戻しを請求することができる。
第7章 第34条 本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。 (その1)本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額を限度として分配するものとし、当該払込済出資額を控除してなお残余があるときは、社員総会の議決により、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得て、国若しくは地方公共団体又は特定医療法人若しくは特別医療法人に当該残余の額を帰属させるものとする。
(その2)第9条及び前条の規定は第32 条の規定にかかわらず変更することができない。ただし、特定医療法人又はは特別医療法人に移行するために変更する場合はこの限りではない。

2.持分の定めのある医療法人が出資額限度法人に移行した場合等の課税上の取扱い
  1. 定款を変更して出資額限度法人へ移行する場合
    法人税、所得税及び贈与税等の課税は生じない。
    社員の合意に基づく定款変更により、出資者が将来退社したときの出資払戻請求権又は当該医療法人が解散した場合の残余財産分配請求権について払込出資額を限度とするもので、出資に係る権利を制限することになりますが、依然として出資持分の定めを有する社団医療法人であり、この定款変更をもって、医療法人の解散・設立があったとみることはできないから、医療法人の清算所得課税、出資者のみなし配当課税、出資払込みに伴うみなし譲渡所得課税等の問題は生じない。

  2. 出資額限度法人の出資の評価を行う場合
    相続税・贈与税の計算における出資の価額は、通常の出資持分の定めのある医療法人と同様、財産評価基本通達の定めに基づき評価される。

  3. 社員が出資払込額の払戻しを受けて退社した場合
    社員のうち1名が退社し、定款の定めに従って出資払込額の払戻しを受けて当該退社社員の出資が消滅した場合には、その時点において、当該出資に対応する剰余金相当部分について払い戻さないことが確定することになる。
    • 退社した個人社員の課税関係
      退社に伴い出資払込額を限度として持分の払戻を受ける金額が、当該持分に対応する資本等の金額を超えない限りにおいては、課税関係は生じない。
    • 医療法人に対する法人税(受贈益)の課税関係
      課税関係は生じない。医療法人にとっては、定款に従い退社社員に出資払込額を払い戻すという出資金額の減少を生ずる取引(資本等取引)に当たるため、一般の営利法人と同様、課税関係は生じない。
    • 残存出資者又は医療法人に対する贈与税の課税関係
      残存する他の出資者の有する出資持分の価額の増加について、みなし贈与の課税の問題が生じることとなるが、次の要件に該当しない出資額限度法人においては、原則として他の出資者に対するみなし贈与の課税は生じないと解される。
      • 当該出資額限度法人に係る出資、社員及び役員が、その親族、使用人など相互に特殊な関係を持つ特定の同族グループによって占められていること。
        但し、次の3要件(同族要件)に該当する場合は、これに該当しないものとされる(現実的には、iの要件クリアが最も難しいとみられる)。
        1. 同族出資比率50%以下
          出資者の3人及びその者と親族等特殊の関係を有する出資者の出資金額の合計額が出資総額の50%以下であること
        2. 同族社員比率50%以下
          社員の3人及びその者と親族等特殊の関係を有する社員の数が、総社員数の50%以下であること
        3. 役員に占める親族割合が3分の1以下
          役員のそれぞれに占める親族等特殊な関係がある者の数の割合が3分の1以下であることが定款で定められていること
      • 当該出資額限度法人において社員(退社社員を含む)、役員(理事・監事)又はこれらの親族等に対し特別な利益を与えると認められるものであること。
        なお、剰余金相当部分に相当する利益は残存出資者へ移転されるものと解されるから、医療法人へ贈与があったものとみる必要はないため、医療法人に対する贈与税課税の問題は生じない。

  4. 社員が死亡により退社した場合
    1. 相続税の課税関係
      社員が死亡により退社した場合において、定款の定めにより出資を社員の地位とともに相続等することができることとされている出資額限度法人の当該被相続人に係る出資を相続等したとき、また、出資払戻請求権を相続等により取得した相続人等がその払戻しに代えて出資を取得し、社員たる地位を取得することとなるときには、当該出資又は出資払戻請求権の価額は、出資としての評価額となり、財産評価基本通達の定めに基づき評価した価額となる。
      一方、社員の死亡退社に伴い、その出資に関する出資払戻請求権を取得した相続人等が現実に出資払戻額の払戻しを受けたときには、当該出資払戻請求権については、出資払込額により評価する。
    2. 他の出資者の課税関係
      上記iで、死亡した社員の相続人等が出資払込額の払戻しを受け、出資を相続しなかった場合で、当該出資に係る剰余金相当額が残存する他の出資者に帰属するものとしてのみなし贈与の問題が生じることになる。

(株式会社ムトウ コンサルティング事業部 税理士 宮下)
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