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税務Q&A

■税務Q&A
◎相続時精算課税制度について(2005年5月31日)
68歳になる開業医ですが、そろそろ息子へ事業承継対策をとる時期ではないかと考えておりますが、相続時精算課税制度のメリットと活用法、及び留意点などについて教えてください。

◆ ◇ ◆ ポイント ◆ ◇ ◆
  1. 相続時精算課税制度は、生前贈与により財産を取得する際、一定の要件を満たす者がこの制度を選択した場合、贈与時の贈与税が軽減され相続時に相続税で精算する、相続税と贈与税の一体化課税制度で、大型の生前贈与を行いやすくするものです。
  2. この制度は、単純な節税効果はありませんが、値上がりが見込まれる財産や高収益物件に適用すると相続税対策としても有効です。
  3. 事業承継対策、相続紛争防止対策として利用しやすい制度で、生前に大部分の遺産分割を行うことも可能となりました。


1.相続時精算課税制度の概要
「相続時精算課税」制度は、親から子への生前贈与について贈与時に軽減された贈与税(非課税となる特別控除額枠2,500万円、それを超える部分について税率20%)を納付し、相続時に相続税で精算する相続税と贈与税の一体化課税方式の制度で、「暦年課税」とどちらかを選択できるものです。贈与者が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価格にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)を加算して相続税を計算し、既に支払った贈与税額を相続税額から控除します(控除しきれない金額は還付されます)。
【相続時精算課税制度の骨子】
適用対象者
(贈与者・受贈者)
65歳以上の親から財産を取得した20歳以上の子である推定相続人(子が亡くなっている場合は20歳以上の孫を含む。年齢はいずれも贈与した年の1月1日現在。住宅取得資金の場合は親の年齢要件はない。)
父母ごとに選択できる(父母以外の者からの贈与については選択できない)。
選択手続き 最初に贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に「贈与税の申告書【第一表及び第二表(相続時精算課税の計算明細書)】」と共に「相続時精算課税選択届出書」、「相続時精算課税に係る財産を贈与した旨の確認書」、受贈者の戸籍謄本等及び戸籍の附票の写し、贈与者の住民票の写しなどの書類を添付して受贈者の住所地の税務署長に提出する。
適用対象財産等 贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限なし。
贈与税の申告義務 この制度を選択したらその親からの贈与については贈与税が課税されなくても贈与税の申告が必要。
特別控除額枠
(非課税枠)
贈与者ごとに2,500万円(住宅取得資金の場合3,500万円。その選択した親からの贈与については、複数年にわたって利用できる。)
110万円の基礎控除は適用できない。
贈与税の税率 特別控除額枠を超える部分については一律20%。
相続時 贈与財産を贈与時の時価で相続財産に合算する。


2.相続時精算課税制度を選択した場合の税額の計算例
◎設例
68歳の父親から事業後継者である35歳の息子が1年目に2,000万円、3年目に1,500万円の贈与を受け、1年目から相続時精算課税の適用を受ける場合

1. 贈与税の計算
・1年目
 2,000万円(贈与額)− 2,000万円(特別控除額)= 0円(課税額)
  → 贈与税はかからない。
・3年目
 1,500万円(贈与額)− 500万円(特別控除額 )= 1,000万円(課税額)
 3年目の特別控除額:2,500万円 − 2,000万円(1年目の控除額)= 500万円
  → 1,000万円 × 20%(贈与税率)= 200万円(贈与税額)
2. 相続税の計算
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、贈与財産の価額(贈与時の価額)と相続財産の価額とを合計した金額をもとに計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額を控除して算出します。控除しきれない贈与税相当額は、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。

3.相続時精算課税制度のメリットと活用法
  1. この制度の選択により、まとまった財産の贈与時の税額の負担が大幅に軽減され、金額の大きな生前贈与が行いやすくなりました。ただ、特別控除額枠2,500万円まで贈与税が非課税になるというわけではなく、またいくら贈与しても相続時に精算されますので、相続財産を減少させる効果はなく、単純に考えると相続税の節税にはつながりません。
  2. しかし、相続財産の想定価額が相続税の遺産に係る基礎控除額の範囲内であれば、この制度の選択により2,500万円までの財産は課税の制約を受けずに財産の移転を早期に実現することが可能であり、2,500万円を超えた贈与分には20%の贈与税がかかりますが相続時の精算で還付されますので、早期に事実上の相続ができるなど、十分利用価値があります。
  3. また、突然来る相続とちがい計画的に財産を生前贈与ができるため、子に最も必要なタイミングで財産移転できるメリットがあり、相続争いを防止する面でも有効ですが、特に、下記のような贈与する財産の選択により相続税対策としても大きな効果が期待できます。
    • 将来値上がりが予想される財産(例えば毎期利益をあげている医療法人の出資の持分)を早めに次の世代に移し、相続税を節税する。
    • 賃貸物件などの高収益物件に適用して、親の所得税軽減、子の相続税納税資金準備を図る。

4.相続時精算課税制度のメリットと活用法
  1. 一度精算課税を選択すると、その選択にかかる贈与者については選択の取り消しはできませんので、慎重に選択する必要があります。暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利になるかは個々の資産の状況、規模等により異なりますのでシミュレーションをしてから決めるといいでしょう。
  2. 相続時に相続財産に加算する贈与財産の価額は、贈与時の価額です。
  3. この制度は、贈与することにより相続財産を減少させる効果は価格変動等の場合を除いてありませんので、長期間にわたり少しずつ贈与できる場合には基礎控除が使える暦年課税が有利です。
  4. 小規模宅地等の相続税の課税価格の減額の特例は、相続税の計算上、一定の限度面積以内でその宅地の評価額の50%(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等については80%)減額できるものですが、この特例は相続・遺贈により取得したものに限られるため対象とはなりません。
    小規模宅地の特例の節税効果は大きいものですから、その適用を受ける財産を決め、相続時精算課税を選択する贈与財産から外した方がいいでしょう。
  5. 登録免許税、不動産取得税については、相続の場合に比べて不利です。
  6. 相続時精算課税の対象となった財産は物納に充てることはできません。

(株式会社ムトウ コンサルティング事業部 税理士 宮下)
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